プロジェクトがない場合の排出量は、プロジェクト計画時点では、予想できないもので、プロジェクト実施後は検証することが出来ないため、その設定は非常に難しいものとなっています。しかし、プロジェクトがない場合の予想される排出量を過大に評価すると、実質的な排出削減となっていないにもかかわらず、過剰なクレジットを発行してしまう可能性があります。そのため、プロジェクトがない場合の予想される排出量を慎重に設定する必要性があります。クレジットを発行する機関、制度によって、その設定方法は異なります。例えば、CDMでは、BAU(プロジェクトが実施されなかった場合の成り行きでの排出量)をベースラインとしていますが、JCMにおいては、BAUを下回る想定排出量をリファレンス排出量として設定しており、これを踏まえて排出削減量を設定しています。
どのようなプロジェクトに対してもクレジットが発行される訳ではなく、一定の条件を満たすことが求められ、多くの制度で排出削減プロジェクトの“追加性”を証明することが求められている。追加性の定義は、制度によって微妙に異なるが、共通しているのは、ベースラインクレジットメカニズムのインセンティブがなければプロジェクトが実施されず、その結果として排出削減量が得られなかったこと、です。
ベースラインクレジットメカニズムの多くは排出規制が実施されていない国や産業分野で実施され、得られたクレジットは排出規制の対象となっている国や産業分野において一定の排出基準を超えた排出量を相殺し、規制を遵守するために利用される。クレジットメカニズムによるインセンティブがなくとも実施されうるプロジェクトに由来するクレジットが排出規制の遵守に利用された場合、実質的な排出削減とは言えないこととなります。
個別の制度の下での定義を見ていくと、京都議定書の下で排出削減目標を負っていなかった途上国で実施されるCDMでは「認証された事業活動がない場合に生ずる排出量の削減に追加的に生ずるもの」と京都議定書第12条5項(c)において規定されています。また、民間のクレジット発行機関、VCSでは、「プロジェクトが、BAUを超える排出削減あるいは除去がなされ、かつ炭素市場によって提供されるインセンティブなしでは実施されないものある」ことが追加性の定義とされています。
これらの定義が述べているように、クレジットメカニズムがなければ実施されえず、実施されない場合に比して追加的な排出削減がなされることが必要となっています。そのため規制対応のための取組みは、ベースラインクレジットメカニズムがなかった場合でも実施されうるため、追加性があると見なすことが難しくなります。また同様に、売電収入が得られるなど、クレジットを売却することで得られる収益がなくとも実施が可能なプロジェクトについても、やはり追加性があると見なすことが難しくなります。