基礎知識

FAQ

質問:ボランタリークレジットの定義

回答:
クレジットは、クリーン開発メカニズム(CDM)のように国際条約が設立した制度の下で発行されるものと、VCSやGold Standardなどの民間のクレジット発行機関が発行するものと二つあります。

以前は、CDMで発行されたクレジットは、公的な規制の遵守(EUの排出量取引制度、EU ETSの遵守)に利用され、VCSやGSなどの民間のクレジット発行機関が発行するクレジットについては、企業の自主的な温暖化対策への取組みに利用されるものにわかれていました。そして民間のクレジット発行機関が発行するクレジットで、企業の自主的な温暖化対策への取組みに利用されるものは、ボランタリークレジットと呼ばれていました。

しかし、近年、ボランタリークレジットが、公的な規制の遵守に利用が認められる一方で、CDMの下で発行されるクレジットが企業の自主的な温暖化対策への取組みに利用されるなど状況は変わってきています。このサイトでは、主に企業の自主的な温暖化対策へのボランタリークレジットの利用について注目していきます。

質問:ボランタリークレジットの具体的な利用方法は?

回答:
ボランタリークレジットの用途には、さまざまなものがあります。一つには、企業が自主的に取組む温暖化対策の中でのクレジットの利用ですが、様々な形で利用されています。ここでは、全てを紹介することは出来ませんが、ここでは、その一部の具体的な利用方法を以下のように紹介します。

バリューチェーンにおける排出量への対策

シェルは、自社の販売する液化天然ガスのバリューチェーン(ガスの採掘と製造から最終消費者における利用の段階まで)において発生する排出量を、クレジットを利用して相殺するために、質の高い自然保護プロジェクト、自然保護、回復などCO2の排出削減あるいはCO2を吸収する取組を行うことによって得られるクレジットを利用しています。このようなLNGをシェルはカーボンニュートラルLNGとして販売しています。

自社の活動範囲外の排出量の削減

グーグルは、自社のスコープ1、スコープ2においては省エネの促進、再生可能エネルギーを導入するなどしてGHGの排出量の削減を図る一方で、グーグルが直接的に排出削減に取組むことの出来ない部分の排出量、自社の製品の出荷、卸売、小売などの販売までの排出量について、クレジットを利用することを温暖化対策の一環として行っています。

自社の温暖化対策としての利用

ディズニーは、自社の温暖化対策において、省エネに取組むとともに、再生可能エネルギー・バイオ燃料(ディズニーランドで生じた廃油の活用)などを行いGHGの排出量を削減し、削減することが出来ない排出量については、ディズニー気候解決基金への拠出を通じて、森林保全プロジェクトなどに投資し、クレジットを取得しています。

顧客の自主的な温暖化対策の支援

BPは、イベント産業が大きな排出源となっていることを踏まえて、イベント主催者の温暖化対策の実施を支援するサービスを提供しています。この中では、イベント開催の際に生じる排出量(会場だけではなく、参加者の移動に関する排出量も含む)を算定し、算定された排出量の削減対策(再エネの利用、プラスチックの利用禁止、参加者への公共交通機関の利用奨励など)を提案します。その上で、削減できない排出量について相殺のためのクレジットも提供し、クレジット利用後の対外的な説明方法についても支援しています。

そのほか、企業の自主的な温暖化対策ではありませんが、公的な規制、国際民間航空機関(ICAO)が実施する国際民間航空部門における温暖化対策、Carbon Offsetting and Reduction Scheme for International Aviation(CORISA)においてVCS、GSなどのクレジットの利用が認められています。また、南アフリカ、コロンビアでは炭素税が導入されていますが、VCSやGSなどのクレジットを利用することが認められています。なお、日本国内の温対法での排出係数の調整には、現時点ではVCS、Gold Standardのクレジットは利用できません。

質問:ボランタリークレジットの買い方・取得の方法は?

回答:
ボランタリークレジットを取得するためには二つの方法があります。一つは、自ら排出削減プロジェクトを実施し、クレジットを創出する方法。もう一つは、既にクレジットを保有している企業から購入する方法です。他の企業から購入する場合、取引所を通じて購入する場合と、取引市場を通さずに、相対取引で直接、購入する方法があります。ボランタリークレジットについては、プロジェクトを開発する、あるいは相対取引でクレジットを購入することが、これまでの主要な取引・取得の方法でした。しかし、近年、ボランタリークレジットを上場する商品市場が現れ、取引所を通じて取引・取得する場合も見られます。また、自らが利用しないクレジットについては取引所あるいは相対での取引を通じて転売することは可能です。

質問:クレジットの創出方法は?

回答:
クレジットを創出するためには、まず何らかのGHGの排出削減プロジェクトを、クレジット発行機関に登録する必要性があります。その上で、プロジェクトを実施し、クレジット発行手続きを行うことでクレジットが創出されます。クレジット発行機関、それぞれで手続きは、異なる点は留意が必要ですが、手続きで必要とされる内容、流れは、多くの場合、以下のような形をとります。

(1).PDDの準備

プロジェクトを開発・実施しようとする事業者は、プロジェクト活動の概要の説明、排出削減量の算定方法、モニタリングの実施方法などを示したProject Design Document(PDD)を準備します。この際、プロジェクトの排出削減の算定方法、モニタリング方法についてはクレジット発行機関で認められる方法論に則る必要があります。また、クレジット発行機関によっては追加で環境保全への対策などが求められることがあるので、それらの追加の要求事項についての対応を準備することが必要です。同時に、PDDが完成した段階でクレジット発行機関による事前審査が行われる場合もあります。

(2).第三者機関による有効化

プロジェクトを開発・実施する事業者が作成したプロジェクトのPDDについて、民間の第三者検証機関による審査が行われ、方法論に則り、PDDが作成されているかどうかチェックされます。

(3).プロジェクトの登録

有効化審査において、方法論が適切に適用されていると認められたプロジェクトについて、正式にクレジット発行機関でクレジットを発行することが可能なプロジェクトとして登録する手続きです。

(4).プロジェクトの実施・モニタリング

登録されたプロジェクトを実施するとともに、プロジェクトの排出削減量をモニタリングし、排出削減量を算定します。これらの結果は、モニタリング報告書としてまとめられます。

(5).第三者機関による検証

モニタリング報告書に記載された内容について、適切にプロジェクトが採用する方法論で決められた通りに実施されているのか第三者機関が検証します。一部のクレジット発行機関では、プロジェクトの有効化、登録手続きを検証手続きと同時に行うことも認めている場合もあります。

(6).クレジットの発行

第三者による検証において問題がないことが確認された後に、クレジット発行手続きが行われ、クレジットが発行されます。

質問:クレジットを創出するプロジェクトには何か基準や条件がありますか?

回答:
クレジットを創出するプロジェクトを実施する際には、追加性のあるプロジェクトを実施することが必要です(追加性については、ボランタリークレジットの基礎知識参照)。

クレジット収益など、ボランタリークレジットを活用することで得られるインセンティブがなくとも、実施されるようなプロジェクトは追加性があるとは見なされません。そのため、企業が、クレジット収益を前提とせずに取り組んだ排出削減プロジェクトについては、追加性があるとは見做されず、クレジットを発行することができません。

質問:クレジットは、どれくらいの価格となっていますか?

回答:
大半のボランタリークレジットは相対取引で取引されているため、実際の取引価格については公開されていません。ただし、このような相対取引での取引動向について、米国のEcosystem Marketplaceという民間団体が、市場参加者から市場動向を守秘義務に反しない範囲で調査した結果を、毎年、公開しており、ボランタリークレジットの取引価格の動向を知ることが出来ます。一方で、ボランタリークレジットを上場している商品取引所(シカゴマーカンタイル取引所(CME)など)では、取引価格が示されています。

質問:クレジットの“質”はどのように確保されるのでしょうか?

回答:
ボランタリークレジットについては、過剰にクレジットが発行されているのではないかなどの懸念が示されています。一方で、ボランタリークレジットを発行するプロジェクトにおいて確実に排出削減が担保されるように確保するための動きも見られます。

ボランタリークレジット取引市場において質の高いクレジットの取引を促すために、Integrity Council for Voluntary Carbon Market (IC-VCM)が、2021年10月に発足して、取組みを開始しています(IC―VCMについては、ボランタリークレジットの基礎知識参照)。

また、ボランタリークレジットは、企業の自主的な温暖化対策への取組みだけではなく、近年、公的な規制の遵守にも利用が認められるようになってきています。

例えば、ICAOが実施する温暖化対策CORISAにおいて、クレジット発行機関についての一定の基準を設け、この基準を満たしたクレジット発行機関が発行するクレジットのみ利用を認めています。基準を満たしているか否かの審査は、Technical Advisory Boardと呼ばれる専門家グループにより行われています。審査の結果、利用が認められないクレジット発行機関もありますが、VCS、Gold Standardなどのボランタリークレジット発行機関は、基準を満たしたとしてCORSIAでの利用が認められています。

質問:クレジットのビンテージとは?

回答:
クレジットは、排出削減プロジェクトによって達成された排出削減量に対して発行され、クレジットのビンテージとは、発行の対象となった排出削減量の生じた年のことです。注意が必要なのは、排出削減量は、2021年に生じたとしても、クレジット発行手続きは、2022年に行われ、クレジット発行年は、2022年となりますが、ビンテージとして注目されるのは、クレジット発行年ではなく、排出削減量の得られた年となることです。

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