ボランタリークレジットの基礎知識

クレジット発行機関

レジットを発行する機関は様々なものがあります。例えば、日本政府が運営するものとして、日本国内で実施される排出削減事業にクレジットを発行するJクレジット制度や、日本政府が途上国と共同で実施しているJoint Crediting Mechanism(JCM)などの制度があります。日本以外でも、カナダ、欧州、豪州などで国や地方政府が、実施しており、また、中国、タイなどの新興国、途上国などでも制度を構築し、運営しています。

また、国際社会においても、京都議定書の下で実施されているクリーン開発メカニズム(CDM)やパリ協定の下で実施される6条4項メカニズムなどの国際機関が運営する制度があります。

国際機関や国、地方政府以外にも、米国や欧州では、民間が独自にクレジットを発行する機関を設けて、国際機関や政府から独立して運営されている場合もあります。民間のクレジット発行機関としては、Verified Carbon Standard(VCS)、ゴールドスタンダードなどの団体が、代表的なクレジット発行機関として挙げられます。

ここでは国際機関、国(日本)、民間によって実施されているベースラインクレジットメカニズムに関する取組みの具体例を挙げます

2015年から2020年にかけてオフセットクレジットの発行量推移(単位:百万tCO2e)
fig1
(出典)World Bank Carbon Pricing Dashboard公開データを踏まえて日本エネルギー経済研究所作成

国際機関

CDM

CDMは、京都議定書の下に設けられた制度です。京都議定書は、1997年に京都で開催された国連気候変動枠組み条約の第3回締約国会議で採択されたものです。この中では、2008年から2012年の5年間を第1約束期間として、先進国に対して90年比での温室効果ガス(GHG)排出削減目標が義務として設定されました。先進国は、この目標を達成するために、自国での排出削減に向けた取組みだけではなく、他国で実施した排出削減プロジェクトに対して発行されたクレジットを利用することが認められていました。CDMは、途上国で実施される排出削減プロジェクトに対してクレジットを発行するもので、既に、多くのプロジェクトが実施され、これまでに20億トンを超えるクレジットが発行されています。ただし、2021年以降、実質的にCDMは活動を停止することになりました。

6条4項メカニズム

パリ協定では第6条4項で国連が管理するクレジットメカニズムが規定され、6条4項メカニズムと呼ばれています。2021年11月にイギリス、グラスゴーで開催されたCOP26 においてパリ協定第6条のパリルールブックが採択されました。COP26において採択されたパリルールブックには、6条4項メカニズムを具体的に実施するための規則や手続きも含まれています。今後、本格的に制度が実施されれば、パリ協定第6条4項のクレジットメカニズムが国際的な炭素市場において大きなクレジットの供給源となる可能性もあります。

日本の取組み

JCM

JCMは、日本政府が、独自に実施しているクレジットメカニズムです。JCMは、日本の優れた環境技術やサービスを途上国に提供し、途上国の持続可能な発展に貢献するとともに、GHGの削減・吸収について日本の貢献を定量的に評価し、日本の排出削減目標に活用すると同時に、国連気候変動枠組み条約の目標の達成に貢献するものです。JCMでは、発行されたクレジットを日本の企業などが利用することが可能となっています。2013年に、モンゴルとJCMを実施することで合意したことを皮切りに、これまでに17カ国が日本とJCMの実施に合意しています。

民間のクレジット発行機関

VCS

JVCSは現在、最も大量のボランタリークレジットを発行しています。VCSは持続可能な開発のための世界経済人会議(WBCSD)や国際排出量取引協会(IETA)などの民間企業が参加している団体が、ボランタリークレジットの認証を目的として2005年に設立したものです。特徴的なのは、森林や土地利用に関連するプロジェクトが多く実施されていることです。この中には単なる植林プロジェクトだけではなく、森林破壊の防止による排出削減プロジェクト(REDD+)や湿地保全による排出削減プロジェクトなど多様なプロジェクトが実施されています。また、近年、副次的便益を備えたプロジェクトについてはClimate Community & Biodiversity(CCB)として認証する取組みを開始し、市場での人気も高いものとなっています。また、VCSで発行されたクレジットは、カリフォルニア州の排出量取引制度での利用が認められ、更に近年では、国際民間航空部門における温暖化対策、CORSIAでの利用が認められるなど、ボランタリークレジット以外の政府の規制などにも利用されるようになってきています。

ゴールドスタンダード

ゴールドスタンダードは2003年にWWF等の国際的な環境NGOが設立した機関であるが、VCSと異なるのはGS自身がクレジットを発行するだけではなく、CDMプロジェクトの中でも、地元共同体への貢献などの副次的便益を有すると見なされたプロジェクトについては、GSが認証する取組みを行なってきたことです。GSは2018年までに、約1億tCO2eのクレジットを発行してきましたが、それとは別にGSの認証したCDMプロジェクトから1900万tCO2eのCERが発行されています。これによりCDMプロジェクトの中でも、排出削減量を達成するだけではなく、それ以外の社会への貢献に関心を持つ企業への需要に応えてきました。GSもVCSと同様にCORSIAでの利用が認められており、今後、規制への遵守のための需要増も見込まれています。

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